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川根の民話「野守の赤牛」

野守の赤牛


山のふところにある家山の里が、だきかかえるように大きな池があります。村の人達は「野守の池」とよんでいました。
この池に水があふれた時、高い所から見ると、大きな牛がねそべっているように見えました。このさみしい池のほとりに、いつのころからか女の行者が庵を結んで住んでいました。

「なんだか、池のはたに女の行者がいるそうだ。」

「うわさじゃ信心をするそうな。うちの隣りの小僧が急に腹ん痛くなって苦しんだもんで、封じてもらったら、とたんによくなったていうこんだ。」

「へえっ、なるほどなあ、たいしたもんだ。」

女の行者の評判は、あっという間に村じゅうに広まりました。
ところが、そのころ村にはいろいろと不思議なことがおこりました。夏の暑いころでした。

「平作さんとこの娘が、道に迷って池に落ちて死んだそうだ。」

「池で水遊びをしていた女の子が、大きな河童に引きずりこまれたそうだ。」

それと同じころ、池一面の水が赤い色に変わって、池のほとりにある、あしやまこもが枯れ始めました。
こんな話が伝わると女衆は子どもが心配で、ろくろく仕事も手につきませんでした。
その年の秋でした。旦那の孫兵衛どんの牛が急に血ヘドを吐いて死んでしまいました。甚兵衛や作右衛門とこの牛も死にました。

「何か悪いものでも食べたずらか。」

「何かのたたりじゃないか。」

と、さわいでいる時、今度は吉兵衛のばあさんが急に熱が出て腹をやみ赤い便が出たかと思うと間もなく死んでしまいました。その他にも子どもが五人、女が三人、男が二人とくだり腹をし、うち五人は苦しみぬいて死んでしまいました。
さあ大変、村じゅう大さわぎになり男衆も仕事に出かけることができません。村の旦那衆は、毎日のように寄合をして相談しましたが、よいかんべんはありませんでした。そこで女の行者に頼んで祈禱をしてもらうことになりました。

庄屋は早速行者のところへ出かけ、

「この村の難儀だ、どうかこの難儀を救ってはくれまいか。」

と、熱心に頼みました。
それを聞いた行者は、三日三晩護摩を焚いて祈禱しましたが、なかなかよくなりません。人々は不安になりました。庄屋もあせりを感じました。

そのうち誰いうとなく

「あの行者は、まやかし者だ、うそつきだ。」

と、いう噂がしだいに広まりました。その噂を耳にした行者はさらに荒行を重ねましたが一向に効きめが現われません。ちからの限界を感じた行者は村人を庵に集めて詳しく話をすることにしました。

「これは牛のたたりじゃ。」

「からだのよごれ物を池に流し込むのがよくないのじゃ。誰か牛の死がいを池のくろに捨てたようなことはないか。」

村人はギクリッとしましたが、誰も返事をする者もなく、みんなだまっていました。

「この池はな、明神さまの池で、この池の底は遠い佐倉村にある桜が池まで続いている不思議な池じゃ、いつまでもいつまでも、きれいにしておかなければならないにじゃ。」

行者は、村の人々にゆっくりとさとすように言いました。夜がふけて人々が帰ってからも一心に祈禱を続けました。夜半をすぎてもまだ祈禱は続きました。効きめが現れないのか時折声が小さく悲しそうになりました。行者は悩み苦しみました。
あくる朝、近くの人々が庵にいくと、女の行者の姿はありませんでした。
それから間もなく、さしもの難病で苦しんだ人々も一日一日とよくなって行きました。
大さわぎだった村も、ようやく静まり人々は仕事に精出すことができました。そのせいか今年は農作物がよく出来て、どこの家でも取り入れに追われ忙しい日が続きました。

庄屋の家には大勢の手伝いが来ていました。中でもおさよという山向うの村から来た娘は、きりょうよしのうえよく働くので、みんなの評判娘でした。今日も早くから働いていましたが、それがどうしたことか急に赤い便が出たので心配になって、近くの占い師に見てもらうと、

「わしは千年野守の池に入った行者だが、今は赤牛となって池の底深くにすんでいる。このごろ右の目に何か入って目がつぶれそうだ。誰か汚い物を池に流したにちがいない。何度も何度も池を汚すなと言ったのに不届者だ。どうしても、お前の病気をなおしたいと思ったら、丑の日丑みつ時に小豆三号三勺柏の葉にくるんで、池の上でふってお経をとなえるがよい。」

と、お告げがあったと言うことでした。
おさよは、夜中にたった一人で出かけるのは心細かったが、言われたとおり丑の日の丑みつ時に小豆を柏の葉につつんで池の上でふりながらお経をとなえました。
すると、とつぜん黒雲が広がり、池には火柱が立ち、大きな牛のようなものが池から飛び上がりました。おさよは腰をぬかさんばかりに驚いて一瞬目をつぶりました。おそるおそる目を開くと、もう半分ばかり池に沈んでいました。

「ああ、あれが赤牛だったのか、池の主にちがいない。」

おさよは急いで家に帰り、一部始終を庄屋に話ました。庄屋はじっと目をとじて聞いているだけでした。そして次の日、心配したおさよの病気はけろりとよくなりました。
それから後、この村の人々は池のまわりで汚れ物を洗ったり、流したりはしませんでした。


 

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