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島田の民話「聖坂と群雀」

聖坂と群雀(ひじりさかとむらすずめ)


むかし高野山からひとりの坊さんが、諸国をめぐりめぐって、伊久美の方から島田宿へと向っていた。
ところが、はじめての土地だったから、坊さんは、小川から長島に下るあたりで、山道にまよいこんでしまった。
日はくれて、あたりはだんだんくらくなってくる。
「これはこまった。家でもあれば、道を聞くこともできようが・・・。」
坊さんは、きょろきょろあたりを見まわしたが、山のなかで家もなければ通る人もない。
坊さんは、あきらめて、
「あした、日がのぼれば、なんとかなろう。今夜は、この山中で夜をあかそう。」
と、つぶやいて、野宿をきめた。
かっこうな場所をさがして、一本の木の根もとにごろんと横になった。
旅から旅で、つかれはてていたから、横になるとすぐ、寝息をたてはじめた。
このあたりは、夜になると、オオカミがうろつきまわるので、村びとたちも近よらないおそろしい所だった。
何もしらない坊さんは、そんなところで、ぐっすり眠りこけていた。
夜もふけると、坊さんの寝息をかぎつけたオオカミのむれが、どこからともなく、近よってきた。
ぶきみな空気が、坊さんにせまってくる。
坊さんは、はっとして目をさました。そのとき、まわりから、どっとオオカミが、坊さんにとびかかった。
あっという間だった。坊さんは何をすることもなくオオカミにかみ殺されてしまった。
あくる日。
通りがかりの男が、それを見ておどろいた。あわてて村へかけもどり、
「坊さんが、オオカミにやられたぞう。」
と、村びとに知らせてまわった。
ぞろぞろと村びとたちも行ってみて、おどろいた。
坊さんはあまりの姿に、村びとたちは声もでず、ただだまって、そのあたりにちらばっているお経の本をひろい集めた。
その場で、ぼうさんのなきがらにお経の本をそなえて、ねんごろにとむらった。
火葬の煙が、せまい空に立ちのぼって、やがて消えようとしたときだった。
突然、びゅっとはげしい風が起こった。ぱっと、灰がまきあげられた。


ぼうさんのなきがらと、お経の本の灰が宙にまうと、それが、たちまちすずめになった。数知れないほどたくさんのすずめになって、空にとびたっていった。
それからというもの、この群雀は、このあたりに住みつき、村びとたちが焼き畑をつくってたねをまくと、どっとおしよせて、たねをみんなつついてしまう。
村では、作物をとり入れができなくなってしまった。
「こまったことだ。あのすずめのやつめ。」
「おどかしても、すかしても、やってくる。あんなにいっぺんにこられたら、なにをしてもだめだ。みんなくわれてしまう。」
「ありゃあ、あの坂で死んだ坊さんの化身だでのう。」
「まったく、修業がたりんで、オオカミにやられるようなことになる。そのうらみを、わしらにむけんでもよかりそうなもんだ。」
「もっとえらい坊さんなら、オオカミの方が近よらなかったはずじゃ。」
「そらそうだ。聖さまならのう。」
「なあに、わからんのう。死んでから、群雀になるなんて聖さまかもしらん。」
村びとはこまりはてて、よるとさわるとそんな話をしていた。
そして、いつか、坊さんの死んだ坂を「聖坂」というようになった。

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